はちみつは本当に鶏肉を柔らかくするのか?砂糖・ステビアとの比較実験

調理実験

鶏むね肉は低脂肪・高たんぱくで筋繊維の多い食材のため、調理の仕方を誤ると、どうしても「パサパサ」「固い」といった印象になってしまうのが悩みどころです。

そんな中、よく耳にする話に「はちみつに漬け込むと肉が柔らかくなる」というものがあります。本当にそんなに違いが出るのでしょうか?

一方で、砂糖は和食を中心に広く使われており、肉料理でもよく利用されます。そして近年はカロリーゼロの甘味料としてステビアも人気です。では、これら3つの甘味料を使った場合に、鶏むね肉の仕上がりはどのように変わるのか?実際に低温調理で比較してみました。

実験方法

材料:鶏むね肉を同じ厚さにカット

マリネ条件

  1. 砂糖:大さじ1
  2. はちみつ:大さじ1
  3. ステビア:1g

マリネ時間:1時間

調理:低温調理器で 57℃ × 5時間50分

評価方法:食べ比べを行い、柔らかさ・ジューシーさ・甘味のなじみ・後味を5段階評価

結果

条件柔らかさジューシーさ甘味のなじみ後味
はちみつ4533
砂糖3343
ステビア3333

はちみつ
内部まで柔らかく、特にジューシーさが際立ちました。表面がコーティングされて熱伝導がゆるやかになった影響かもしれません。ただし、甘味が肉になじんでいるとは言いにくく、風味はやや浮いた印象です。

砂糖
柔らかさの面では控えめですが、鶏肉の味となじみが良く、もっとも自然に食べやすい仕上がりでした。

ステビア
柔らかさやジューシーさに特別な効果はなく、甘味が浮いてしまう印象でした。

左:はちみつ 中央:砂糖 右:ステビア

考察

今回の結果からそれぞれの甘味料の「得意・不得意」を発見することができました。

まずはちみつは、やはり「柔らかさ・ジューシーさ」の点で効果が確認できました。はちみつには糖分に加えて少量の有機酸や酵素が含まれており、それらがタンパク質の結合をゆるめたり、水分を保持したりする作用が考えられます。さらに表面が粘度の高い糖液で覆われることで、熱伝導がゆるやかになったこともジューシーさに寄与したのかもしれません。ただし味のなじみという点では、甘味が独立して主張しやすく、「料理としての自然さ」はやや欠けました。

砂糖は、肉を大きく柔らかくする効果は目立たなかったものの、最も「自然に食べやすい味」になりました。砂糖は分子が小さく、比較的均一に浸透しやすいため、肉の旨味を壊さずに甘味を下支えしてくれるのだと思います。つまり「柔らかさよりも、味のなじみをよくする調味料」と言えるでしょう。

一方でステビアは、柔らかさやジューシーさに変化を与えることはほとんどありませんでした。ステビアの主成分は「糖」ではなく「配糖体」であり、砂糖のように浸透圧を発揮して水分を保持したり、タンパク質に働きかけたりする作用はほとんどありません。甘味は強いのに、肉の仕上がりに寄与しないため、「甘さが浮いて感じられる」という結果になったのだと思います。

総合すると、柔らかさを求めるならはちみつ、自然な味わいを求めるなら砂糖、ステビアは向かないという結論になります。

しかし今回の一番の気づきは、「甘味料そのものは鶏むね肉と相性がよいとは限らない」という点でした。柔らかさやジューシーさを狙うなら、甘味料よりも塩や酸、発酵食品(ヨーグルトや塩麹など)の方が効果的で、料理としても自然な仕上がりになる可能性が高いと思われます。

まとめ

はちみつは「柔らかさ・ジューシーさ」に効果あり

砂糖は「風味のなじみ」が最も自然

ステビアは甘さはあるが、肉の柔らかさやジューシーさには寄与せず

甘味料は必ずしも肉のマリネに向いていない可能性あり

今回の比較で「家庭料理で実際に役立つのはどれか」という視点も見えてきました。はちみつで柔らかさを補い、砂糖で味のなじみを調整するなど、甘味料の特徴を理解して使うのがよさそうです。

次回は、塩麹やヨーグルトなど発酵や酸を利用したマリネを試すと、さらに実用的な知見が得られるのではないかと思います。

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