地元の食材を味わう楽しみのひとつが、その土地ならではの鶏肉に出会うことです。先日、神奈川県産の地鶏「かながわ鶏」をいただく機会がありました。これまでに何度か地鶏を食べる機会はありましたが、特に印象に残っているのは九州の「はかた地どり」です。今回はこの二つを比較しながら、「かながわ鶏」の魅力をじっくり味わってみました。
かながわ鶏とは
「かながわ鶏」は、神奈川県が独自に開発した地鶏で、県内の指定農場で大切に育てられています。飼育期間は約80日以上と、一般的なブロイラーよりもかなり長く、ゆっくりと時間をかけて筋肉を発達させることで、しっかりとした肉質と濃いうま味を実現しています。また、飼料には地域産の穀物や栄養バランスを考慮した混合飼料を使用し、鶏そのものの香りや味を引き出す工夫がされています。
そのため「かながわ鶏」は、脂の量は控えめながら、噛むほどに肉のうま味が口いっぱいに広がるのが特徴です。食感も硬すぎず、ほどよい弾力があり、噛むごとにしっかりとした肉の存在感を感じられます。鶏肉本来の味を楽しみたい人に特におすすめしたい地鶏です。
炭火焼きで味わう「かながわ鶏」
今回はもも肉を炭火で焼いていただきました。炭火で焼くと、火の通り方が均一になり、外は香ばしく、中はジューシーに仕上がります。「かながわ鶏」のもも肉は、皮目にほどよく脂がのっており、炭火の熱で香ばしい香りが立ち上がる瞬間から食欲を刺激されます。
箸を入れると、肉は弾力がありながらも繊維がほどけるような感覚があります。一口噛むごとにじわっと肉のうま味が染み出し、脂の甘みは控えめながら、素材の香ばしさと自然な香りがしっかりと楽しめます。特に、もも肉の深いコクと、皮目の香ばしさが絶妙にマッチしていて、噛むほどに味わいが増していくのが印象的でした。
「はかた地どり」との味わいの違い
ここで、以前に食べた「はかた地どり」と比較してみます。「はかた地どり」は九州福岡で育てられるブランド地鶏です。特徴は脂の甘みと肉汁の豊かさで、噛むと肉汁がじゅわっと口の中に広がります。そのため、しっかりとしたコクと濃厚な味わいが特徴です。
一方、「かながわ鶏」は脂の主張は控えめで、うま味がじわじわと広がるタイプです。噛みごたえはしっかりしていますが、固すぎず、肉そのものの香りと味を素直に楽しむことができます。言い換えれば、「はかた地どり」が力強く濃厚な九州の地鶏の味であるのに対し、「かながわ鶏」は上品で繊細な関東の味わいを感じさせます。
香りの違いも面白いポイントです。「はかた地どり」は脂の甘い香りが立ち、焼き上がった瞬間から食欲をそそります。「かながわ鶏」は、草のような自然な香ばしさがあり、控えめながらも奥深い香りが楽しめます。この違いは、飼育環境や餌の違いによるものかもしれません。九州の地鶏は力強く育つ環境で脂を蓄える傾向がありますが、神奈川の地鶏はより自然に近い環境でゆっくりと育つため、香りや味わいも穏やかに仕上がるのだと思います。
調理の工夫でさらに引き立つ味わい
「かながわ鶏」の魅力は、シンプルな調理法でも十分に感じられますが、工夫次第でさらに味わいが増します。炭火焼き以外にも、塩とハーブでマリネしてオーブンで焼いたり、煮物やスープにしてうま味を引き出すのもおすすめです。
個人的には、鶏肉の繊細なうま味を活かすため、あえて強い味付けはせず、塩だけで味を整えてシンプルに焼くのが一番だと感じました。そうすることで、「かながわ鶏」の肉本来の香りや食感が際立ち、噛むたびに口の中にじんわりと広がるうま味を存分に楽しめます。
日常の贅沢としての地鶏
「かながわ鶏」は派手な個性はないものの、落ち着いた味わいで食べ飽きず、毎日の食卓にも取り入れやすい地鶏です。濃厚な脂や強いコクを求める人には「はかた地どり」の方が好みかもしれませんが、鶏肉そのものの味をじっくり楽しみたい人には「かながわ鶏」が向いています。
地元神奈川の農場で大切に育てられたこの地鶏は、まだ知名度は高くありませんが、食べてみるとその価値が十分に伝わります。これから徐々に飲食店や家庭での利用が増え、神奈川の新しい名物として定着していく可能性も感じました。
まとめ
「かながわ鶏」は、噛むほどにうま味が広がる、上品で落ち着いた地鶏です。「はかた地どり」と比べると、脂の甘みは控えめで、肉そのものの香りや味わいを楽しめるのが特徴です。炭火焼きやシンプルな塩焼きでその魅力を存分に味わえます。派手さはありませんが、日常の贅沢として食卓に取り入れたくなる、そんな地鶏でした。
地元の味としてこれからの成長が楽しみな「かながわ鶏」。鶏肉好きなら一度は味わってみる価値があります。

コメント